初めて涙を流した歌舞伎「伽羅先代萩『御殿』『床下』」を紹介します!

観劇記録
スポンサーリンク

こんにちは。ちひろのブログへようこそ。

このブログでは、歌舞伎好きの筆者による観劇記録やオススメの演目について紹介しています。

ちひろ
ちひろ

今日は、大好きな演目「伽羅先代萩めいぼくせんだいはぎ」を紹介します。

我が子が目の前で殺されながらも忠義を尽くす姿が印象的な、歌舞伎ならではのテーマです。

はい、そうです。

涙の理由は、子供が殺されてしまうシーンがあるからです。

「え?!我が子が目の前で殺される…?!」

なかなか衝撃的ですが、「忠義」を題材にした、歌舞伎の魅力がたっぷり詰まった演目です。

見どころ

・女形の大役の一つと言われる「政岡」の活躍

・妖しさたっぷりの実悪「仁木弾正」

まずは登場人物から解説します。

登場人物

配役は、私が実際に観劇した歌舞伎座八月納涼歌舞伎(2019年8月)のものです。

政岡(中村七之助さん)…鶴千代の乳母めのと

千松(中村勘太郎さん)…政岡の実子

足利鶴千代(中村長三郎さん)…伊達藩主足利頼兼の嫡子。頼兼が不行跡を理由に隠居を命じられ、伊達藩の跡継ぎとなる。

栄御前(中村扇雀さん)…管領(幕府の高官)の妻

仁木弾正にっきだんじょう(10代目松本幸四郎さん)…妖術を操り、御家乗っ取りを企てる足利家の家老。典型的な「実悪」の役柄。

八汐(10代目松本幸四郎さん)…仁木弾正の妹

荒獅子男之助(坂東巳之助さん)…足利家御殿、床下の守護番

ストーリー&見どころ

江戸初期に伊達政宗を藩祖とする仙台藩で起こったお家騒動(伊達騒動)が題材です。

三代目藩主足利頼兼は、不行跡を理由に幕府から隠居を命じられ、幼子の鶴千代が家督を相続することになります。

外題の「伽羅きゃら」とは、高価な香木の名で、伊達綱宗(頼兼のモデル)がこれを用いて作った下駄を履き、廓に通ったという巷説を取り入れたものです。

御家横領を企む仁木弾正一派から、幼い主君を守る乳母政岡の活躍を中心に描かれています。

「御殿」

乳母の政岡は、鶴千代が「男を嫌う病気になった」と偽って人を遠ざけ、毒殺を恐れて、若君のための食事を用意しています。

飯炊ままたき」と呼ばれるこのシーンは見せ場のひとつです。

茶道の所作に従って、茶道具を使ってお米を炊きます。

そこへ見舞いと称してやってきた栄御前が持参した菓子を鶴千代に勧めます。

毒殺を危ぶむ政岡が戸惑うところ、走り出て菓子を口にしたのは政岡の息子、千松。

畏れていたとおり仕込まれていた毒に千松は苦しみだし、さらに悪巧みの露見を恐れた八汐によって、懐剣でなぶり殺されてしまいます。

「あーー」と叫びながら殺されてしまう千松を観て、涙が止まりませんでした。

しかし政岡は顔色を変えません。

その様子を見た栄御前は、政岡が千松と鶴千代を取り違えて育て、御家横領を企てたと邪推し、

すっかり気を許して一味の悪事の証拠である連判状を渡して去ります。

ここからのクドキが最大の見せ場です。忠義のため、我が子を犠牲にせざるを得なかった政岡の、母親としての悲しみを切々と訴えるシーンです。

政岡は、日頃の言い聞かせを守って主君を救って千松を褒めながらも、悲しみに泣き崩れます。

クドキ…義太夫狂言の中で女性が自分の心情を切々と訴える場面

感情を前面に出して三味線や竹本の語りに合わせ舞踊に近い様式的な動きをします。

そして再び現れた八汐を成敗します。

こうして政岡は、我が子の敵であり、御家に仇なす八汐を討ち果たします。

しかし、そこへ一匹の鼠が現れ、連判状の一巻を咥えて逃げ去ってしまいました…。

物語は「床下」の場へ続きます

「床下」

足利家床下では、荒獅子男之助が陰ながら鶴千代を守護していました。

ここへ巻物を咥えた鼠が現れ、男之助はこれを捕らえて打ち据えますが、隙をみてその場を逃げ出した鼠は、やがて仁木弾正の姿へと変わります。

政岡の隙をついて一巻を奪い返したのは、妖術で姿を変えた弾正でした。

仁木弾正は巻きを咥えてスッポンから登場します。

スッポン…花道の「セリ」

忍術使い・妖怪・幽霊など非現実的な役の出入りに使用されます。

この時場内の証明は暗くなり、「面明かり」というロウソクで照らされ、仁木弾正の妖しさをより際立たせる演出がなされます。

仁木弾正の登場シーン↓↓

一巻を取り戻した弾正はほくそ笑み、何処へともなく立ち去って行くのでした…。

「床下」の場は短いながらも、仁木弾正の妖しさが表現される洗練された演出が見どころです。

物語は「問注所対決」・「詰所刃傷にんじょう」の場に続き、弾正は細川勝元による裁判に敗れ、抵抗の末に成敗されます。

2019年の8月納涼歌舞伎では「御殿」・「床下」のみの上演でした。

いつか「対決」・「刃傷」を観るのを楽しみにしています。

最後に

我が子千松を目の前で殺されながらも忠義を尽くす政岡の姿には、心打たれるものがありす。

「強さ」や「乳母としての忠義」が表現されていて、かっこいい女性、という印象を抱きました。

女形の魅力が詰まった伽羅先代萩を観て、

また歌舞伎が大好きになりました♪

是非たくさんの方に観て頂きたいオススメの演目です。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

コメント